初めての棚卸し|
任されても迷わない、やり方と楽にするコツを図で解説

コラム 公開日: 2026-10-19 執筆・編集: nanco 編集部
倉庫の棚の前で、軍手の手が箱を1つずつ指さして数え、もう一組の手が白紙に書き留めているイラスト。数え終えた箱には丸いシール

「棚卸し、よろしくね」と言われたけれど、何をどこから始めればいいのか分からない。そんな方に向けて、棚卸しとは何か、どう進めるのか、当日を楽にするコツまでを図でまとめました。

棚卸しの種類や時期、税務との関係といった全体像は、「棚卸しとは?完全ガイド」にまとめています。

棚卸しとは?

棚卸しとは、実際の在庫を数えて、帳簿やシステムの数と比べ、違っていれば数えた数に直す作業です。

ふだんの棚卸しと、期末の棚卸しがある

棚卸しには、正しい数を知るためのふだんの棚卸しと、決算のために年に1回行う期末の棚卸しの、2つがあります。期末の棚卸しでは、決算日(3月決算なら3月31日)の時点の在庫を数えます。期末は全部を数え、ふだんは一部を何度も数えます。

左では小さな棚を横目で見て確かめ、右では同じ人が巨大な棚を見上げている

初めて棚卸しをお願いされるのは、たいてい期末の棚卸しです。たとえば、予備品が約600種ある化学メーカーの設備グループ(5名)は、年末に一度だけ、人の目で棚卸しをしています。ふだんの棚卸しは、ズレの原因を途中でつかみ、在庫管理そのものを良くするために行います。原因には、紛失やサンプル出し、出荷の間違い、期限切れの廃棄、不良品などがあります。

言葉の意味や語源は、「棚卸しの意味」にまとめています。

期末に数えた数で、利益と税金が変わる

期末の棚卸しで知りたいのは、売り物や原材料の在庫が、会社にどれだけ残っているかです。残っている在庫は、会社の資産です。お金が形を変えて、棚に置いてあるのと同じです。

棚に並んだ箱のうち1つの中身を点線で拡大すると、硬貨とお札の束が詰まっている

資産の額は、仕入れ値(原価)×残っている数で決まります。

経理の記録では、仕入れた数から売れた数を引いて、「残っているはず」の数が出ています。ただ、廃棄した物や記録の漏れがあると、実際の数とはズレます。そこで、棚卸しで数えた実際の在庫数をもとに、今の資産を計算し直します。

仕入れた物のうち、売れずに残った分は、その年の費用から外れて資産になり、その分だけ利益に加わります。数えた在庫が多いと、利益は増えます。少なければ、利益は減ります。利益が変われば、税金も変わります。数え間違いは、そのまま利益と税金の間違いになります。

左は箱が2つで、横の硬貨の山は低い。右は箱が6つで、硬貨の山は高い。どちらも山の上の赤い部分が税金、下が利益

何を数えて、何を数えないかも、資産になるかどうかで決まります。

何を数えて、何を数えないの?

数えるのは、決算で資産として計上する物だけです。全部ではありません。最初に、数える物と数えない物を分けます。

FIG.01 資産として計上する物だけが、棚卸しの対象
物数えるか
原材料・仕入れた商品数える
単価が高い部品一つひとつ数える
ネジなど単価が低い物開けた箱は数えない会社も多い
不良品・しばらく使っていない物残すなら数える/捨てたら数えない
決算日の前に捨てた物数えない

迷いやすいのは、ネジ一本一本まで数えるのか、もう売らない物を数えるのか捨てるのか、といったところです。こうした判断は、棚卸しの前に済ませておきます。決めておく線は、次の3つです。

  • 仕入れた物を、どの段階から原材料として数えるか
  • 不良品や、しばらく使っていない物を在庫として数えるか
  • 単価の低い物を、消耗品として数えずに済ませるか

要らない物は、赤札で見分ける

数える物と数えない物を分けるには、まず要らない物を見分けます。そこで役に立つのが「赤札作戦」です。しばらく使っていない物、壊れた物、もう売らない物に赤い札を付けて、誰が見ても分かるようにします。

左には箱がそろった棚。右では、赤札を付けた古い椅子とバケツを抱えた人が、出口へ運び出している

赤札を付けた物は、捨てるか、資産として残すかを決めます。捨てる物は、決算日の前に捨てておきます。捨てるかどうかで、今期の利益が変わるからです。決算日に棚に残っている物は、捨てるつもりの物でも、在庫として数えます。捨てた物は、何をいくつ捨てたかを記録しておきます。

ネジのように単価が低い物は、数えないこともある

数えるかどうかは、単価の違いでも分かれます。たとえばネジのように単価が低い物は、箱を開けたら消耗品として処理する会社も多くあります。その場合、開けた箱は数えません。一方、単価が高い物は、一つひとつ数えます。

ネジの大きな瓶には目もくれず、高価なモーターに深くお辞儀して数える人

税金のルールでは、使わずに残っている消耗品も、棚卸資産のひとつです(法人税法施行令 第10条の「消耗品で貯蔵中のもの」)。ただし、作業用の消耗品のように、毎年おおむね同じ量を買っていつも使う物は、扱いが違います。同じやり方を続けることを条件に、買った年の費用にしてよいとされています(国税庁 法人税基本通達 2-2-15「消耗品費等」)。

数える場合も、細かくて大量にある物は、袋を開けて中身までは数えません。未開封の袋の数だけを数え、開けた袋は数える対象から外します。

FIG.02 これだけで、数える手間がぐっと減る
未開封の袋を1・2・3と数え、開けた袋には「数えない」の札が付く。

これらの線は、担当者ひとりで決めるものではありません。原材料にするか消耗品にするか、資産に残すか廃棄するかは、会社でルールを決め、税理士と合わせておきます。

どんな順番で進めるの?

棚卸しは、次の5つの順で進みます。

準備する 赤札の物を出し、番号を振り、数えやすく置く
数える 印を付けて、紙かバーコードで数える
集計する 数えた数をまとめる
ズレを確かめる 帳簿上の数と比べる
経理へ渡す 原価×個数でまとめて渡す
ズレたら、数え直す・原因を探る

いつから準備を始めるか、何人で数えるかは、「棚卸しのやり方」で時間の順に説明しています。

① 準備する:赤札・番号・置き方

数える前に、次の3つを済ませておくと、当日の手間が減ります。

赤札の物を、先に出す

赤札を付けた物は、数える前に棚から出します。捨てる物は決算日の前に捨て、資産として残す物は、別の場所にまとめて数えます。

番号を振り、置き場所とつなぐ

数える物には、短い番号を振ります。仕入れたときの長い名前のままでは、数えるときも書くときも手間がかかります。商品コードやバーコードがすでに付いている物は、それをそのまま使います。

FIG.03 長い名前より、短い番号
「ネジ M6×20 ステンレス 六角」の札に線が引かれ、箱に「NJ-012」の札が貼られる(番号は例)。

おすすめは、英字2文字+番号です。ネジなら NJ-001、ナットなら NT-001 のように付けると、頭文字から物が分かります。通し番号だと、番号を見ても何の物か分からず、探すのに手間がかかります(一品物は、通し番号でも構いません)。

番号が決まったら、棚にも同じ番号のラベルを貼り、置き場所とつなげます。

FIG.04 番号を見れば、置き場所の見当がつく
棚にラベル(NJ・NT)が付くと、箱がそれぞれ自分の場所へ移る。

私たちが開発している在庫管理アプリ「nanco」では、番号をそのままバーコードのラベルにして印刷できます(バーコードの作成・印刷)。

数えやすく置く

当日、ひと目で数が分かるように置いておきます。よく使われるのは、次の3つです。

10個ずつまとめる。 1つずつではなく、まとまりで数えられます。

FIG.05 10個ずつなら、10・20・30と数えられる
ばらばらのナットが、10個ずつ3つのトレイに収まる。

数を貼っておく。 前もって数えた数を書いて、箱に貼ります。

FIG.06 事前に数えておく現場も多い
棚の箱に、数を書いた紙が貼られていく(数は例)。

線を引く。 基準の線を決めておき、積んだ高さで数が分かるようにします。

壁に赤い線が引いてある。左は箱を10個積むとちょうど線の高さになり、右は6個で線に届いていない

② 数える:手で数えるか、バーコードで数えるか

数えた物には、チェックを入れていきます。ペンで印を付けるだけでも十分です。

FIG.07 数え終えた箱から、チェックが積み上がる
数え終えた箱から順に、ペンでチェックが入っていく。

数え方は、手で数えて紙に書くか、バーコードを読み取るかの2つです。

手で数えて、紙に書く
商品コードと数を書いていく
数える人と書く人の2人1組が多い
あとで Excel にまとめる
バーコードで数える
ラベルを貼って読み取り、数を入れる
帳簿上の在庫数と数えた数を、その場で突き合わせられる

③〜⑤ 集計して、ズレを確かめ、経理へ

集計する

品目ごとの数をまとめます。紙で数えた場合は、書いた数をあとで Excel に入力します。バーコードで数えた場合は、入れた数がそのまま記録に残ります。

ズレを確かめる

集計した数を、帳簿上の在庫数と比べます。ズレが出たら、次の順で確かめます。どこまで調べるかは、会社や現場によります。

  1. まず数え直す。いちばん多いのは数え間違いで、もう一度数えると、ズレの多くは消えます
  2. 合わなければ、入荷中の物のように動いている物と、入荷・出荷の記録の漏れを見る
  3. それでも合わなければ、伝票まで遡る。伝票と記録を見比べて、抜けがないかを見ます

持ち出しや紛失は、記録が残りにくく、追いにくいところです。ズレが出たときの直し方は、「棚卸しをしないとどうなる?」で症状別にまとめています。

経理へ渡す

原価×個数でまとめて、経理に渡します。渡すのは、品目ごとの数と金額をまとめた表(棚卸表)と、その合計金額、捨てた物の内訳です。棚卸表は、決算の書類として残しておきます。

棚卸しを楽にするには?

ここまでの手順は、紙でもバーコードでも進められます。手間がいちばん変わるのは、数を記録するところです。

棚卸しを楽にするいちばんのコツは、バーコードを使うこと。
棚卸しのためだけに、バーコードの仕組みを入れてもいいくらいです。

手で数えると、書いた数をあとで Excel に打ち直す手間がかかります。バーコードなら、打ち直しは要りません。入れた数がそのまま記録に残り、帳簿上の在庫数との差も、その場で分かります。

nanco の棚卸し機能では、スマホでバーコードを読み取って棚卸し数を入れます。ハンディターミナルのような専用の機器は要りません。在庫数との差は自動で計算され、確定すると在庫数に反映されます。

初めての棚卸しチェックリスト

期末の前に確かめておくことを、章の順にまとめました。

期末の棚卸しの前に
数える物と数えない物の線を決めた
使わない物に赤札を付けた
捨てる物は、決算日の前に捨てた
細かい物は、未開封の袋だけ数えると決めた
原材料・資産の線を税理士と合わせた
番号のルールを決めた(英字2文字+番号)
棚の位置を決め、棚ラベルを貼った
置き方(10個ずつ・数を貼る・基準の線)を決めた
数えたら印を付けるルールを決めた
紙かバーコードかを決めた

棚卸しの種類や時期と頻度、税務との関係は、「棚卸しとは?完全ガイド」にまとめています。

よくある質問

棚卸しとは、何をする作業ですか?
実際の在庫を数えて、帳簿やシステムの数と比べ、違っていれば数えた数に直す作業です。決算のために年に1回行う期末の棚卸しと、正しい数を知るためのふだんの棚卸しがあります。
ネジのような細かい物も、数えますか?
会社によって違います。ネジは単価が低いので、箱を開けたら消耗品として処理する会社も多くあります。その場合、開けた箱は数えません。原材料にするか消耗品にするかは、会社でルールを決め、税理士と合わせておきます。
数えた数が合わないときは、どうしますか?
まず数え直します。いちばん多いのは数え間違いです。それでも合わなければ、入荷中の物や入荷・出荷の記録の漏れを見て、伝票まで遡ります。どこまで調べるかは、会社や現場によります。