棚卸しをしないとどうなる?差異の原因と直し方を症状別に解説

コラム 公開日: 2026-07-17 執筆・編集: nanco 編集部

【クラウド在庫管理アプリ「nanco」のコラム】棚卸しをしないと、帳簿と現物のズレが直されないまま積み重なり、欠品や二重発注、利益や税額の計算違いにつながります。差異の原因の見分け方と直し方を、「特定の商品だけ毎回マイナス」などよくある4つの症状別にまとめました。

月末の棚卸し、今月も見送ってしまった。数えなくても、今日も仕事は回っている——。

たしかに、棚卸しをしなくても業務はすぐには止まりません。ただ、帳簿と現物のズレは静かに積み重なっていきます。この記事では、棚卸しをしないと何が起きるのか、そして差異が出たときにどう直すのかを、症状別にまとめました。

この記事は、特集「棚卸しとは?やり方・種類・時期から効率化までの完全ガイド」のクラスター記事です。全体像は特集トップからどうぞ。

1. 棚卸しをしないとどうなる?

棚卸しをしないと、帳簿と現物のズレが直されないまま積み重なり、在庫の数字が信用できなくなります。その結果、欠品と二重発注が起きやすくなり、期末には利益や税額の計算も不正確になります。さらに時間が経つほど、差異の原因はたどれなくなります。

起きることを、順番に見ていきます。

帳簿が信用できなくなり、欠品と二重発注が起きる

在庫のズレは、放っておいても自然には直りません。サンプルの持ち出しや破損の記録漏れが毎日すこしずつ積み重なり、帳簿と現物の差は月を追うごとに広がります。

帳簿が信用できなくなると、現場は数字を見ずに動き始めます。
「在庫はあるはず」と発注を見送って欠品する。数字が当てにならないから多めに頼んで、あるのに二重で発注する。ECで販売している場合は、在庫切れに気づかず注文を受けてしまう「売り越し」も起きます。どれも、ズレた帳簿をもとに判断した結果です。

利益と税額が不正確になる

期末の在庫金額は、売上原価と利益の計算にそのまま使われます。期末の在庫が実際と違えば利益が変わり、利益が変われば税額も変わります。決算のしくみは、特集記事の「税務と棚卸し」の章で説明しています。

差異の原因が、あとから追えなくなる

差異は、出た直後がいちばん調べやすいものです。「先週サンプルで2個出したな」と思い当たれるのは、記憶が新しいうちだけ。
数か月分のズレがまとめて見つかると、原因の候補が多すぎて切り分けられません。原因が分からないままだと、帳簿を直しても同じズレが翌月また出ます。


2. 差異の直し方 — 症状別に原因を見分ける

ここからは、実際に差異が出たときの直し方です。差異の出方には型があり、出方を見ると原因の見当がつきます。現場でよくある4つの症状に分けました。

症状1. 特定の商品だけ、毎回マイナスになる

同じ商品ばかり、数えるたびに帳簿より少ない。この場合に疑うのは、記録を通らない持ち出しです。サンプルで出した分、試食やテイスティングで開けた分、割れて捨てた分。売上にもレジにも残らない出庫が、その商品に集中して起きています。

見分けるサイン: マイナスが決まった商品、決まったカテゴリに偏っている。

直し方: 「捨てた・持ち出した、その場で記録する」のルールを、まずその商品だけに作ります。理由をひとこと添えて記録しておくと、次の棚卸しで答え合わせができます。

症状2. ふだんは気にならないのに、月末にまとめてズレる

月末の棚卸しのたびに、まとまった差が出る。これはひとつの大きな原因ではなく、小さな記録漏れの積み重ねが正体であることがほとんどです。忙しい時間帯の入力忘れ、数字の打ち間違い、置き場所を移して記録しなかった分。1件ずつは1〜2個のズレでも、1か月分たまると目立つ数になります。

見分けるサイン: 特定の商品に偏らず、いろいろな商品が少しずつズレる。

直し方: 原因が分散しているので、月1回の棚卸しだけで追うのは大変です。数える範囲を区切って週ごとに回す循環棚卸しにすると、ズレが小さいうちに見つかり、「あのときの分だ」と思い当たれるようになります。

症状3. 帳簿より現物のほうが多い(プラスの差異)

減るのではなく増えている場合、持ち出しや盗難では説明がつきません。定番の原因は、入庫の二重記録数え間違いです。同じ納品を2人が別々に入力した。「1ケース=24本入り」を、24と数える人と1と数える人が混ざった。プラスの差異は損がないように見えますが、帳簿が現実と合っていない点ではマイナスと同じです。

見分けるサイン: 納品のあった商品や、ケース単位で扱う商品に出やすい。

直し方: 入庫を記録する係を決めて、窓口をひとつにします。あわせて、数える単位(ケースか、バラか)を先にそろえます。

症状4. 場所によって、ズレ方が違う

売り場と倉庫、あるいは店舗ごとなど、複数の場所で在庫を持っている場合。場所によって差異の出方がまったく違うなら、原因は人でも商品でもなく、ルールの不統一です。片方は移動をその場で記録し、もう片方はあとでまとめて記録している。数える単位やタイミングが場所ごとに違う。同じ商品でも、ルールが違えばズレ方も違ってきます。

見分けるサイン: 同じ商品なのに、場所によって差異の傾向(プラスかマイナスか、大小)が分かれる。

直し方: いちばんズレの小さい場所のやり方を聞き出して、そのルールに他をそろえます。ゼロから理想のルールを作るより、現場で実際に機能しているやり方に寄せるほうが定着します。


3. 立て直しの最初の一歩 — 小さく数え直す

「もう何か月も棚卸しをしていない」という状態からでも、立て直せます。コツは、全部を一度にやり直そうとしないことです。

  1. 金額の大きい商品と、上の症状に心当たりのある商品だけを選ぶ
  2. その範囲だけ数えて、帳簿を実際の数に直す
  3. 差異の理由をひとこと記録して、記録のルールをひとつだけ見直す

まず狭い範囲で「帳簿が合っている」状態を作り、そこから範囲を少しずつ広げていきます。数え方の手順そのものは、棚卸しのやり方で順を追って説明しています。


4. アプリを使うと、原因調査はどう変わるか

症状の見分けも原因調査も、材料になるのは日々の記録です。ここでは、私たちが開発しているクラウド在庫管理アプリ「nanco」が、この記事の内容とどうつながるかを紹介します。

  • 棚卸し機能では、スマホでバーコードを読み取って数えた数を入力すると、現在の在庫数との差がその場で表示されます。確定するとそのまま在庫数に反映され、いつ・何を数えたかの記録が残ります
  • メモ機能では、在庫を変更するときに理由を残せます。「なぜ減ったか」が記録に残っていれば、症状1のような差異は棚卸しの前に答え合わせが済んでいます

範囲を区切って少しずつ進められるので、症状2の対策になる循環棚卸しにも向いています。


5. まとめ

  • 棚卸しをしないと、帳簿が信用できなくなり、欠品・二重発注・利益や税額の計算違いにつながります
  • 差異の出方には型があります。症状から原因の見当をつけて、記録のルールを直します
  • 立て直しは小さく。金額の大きい商品から数え直して、合っている範囲を広げていきます

差異は、責めるための数字ではなく、記録のどこを直せばいいかを教えてくれる手がかりです。まずは気になっている商品ひとつから、数え直してみてください。

棚卸しの全体像(種類・手順・時期・税務)は、特集記事「棚卸しとは?やり方・種類・時期から効率化までの完全ガイド」にまとめています。

よくある質問

何年も棚卸しをしていません。何から始めればいいですか?
全部を一度に数え直す必要はありません。金額の大きい商品や、数が合っていない気がする商品に絞って数え、帳簿をまず実際の数に直します。合っている範囲を少しずつ広げながら、差異の理由をひとことずつ記録していくと、次からの原因調査が楽になります。
棚卸しの差異はどのくらいまで許容されますか?
一律の基準はありません。率の目安を決めるより、「差異の理由を説明できるか」を基準にするのが実務的です。金額の大きい差異から原因を調べ、説明のつかない差異が続く商品は、記録のルールを見直す対象にします。
帳簿より現物が多いプラスの差異は、問題ないのでしょうか?
損はしていないように見えますが、帳簿が現実と合っていない点ではマイナスの差異と同じです。入庫の二重記録や、数える単位の混在が定番の原因です。放置すると発注や利益計算の前提が崩れるので、マイナスの差異と同じように原因を調べて帳簿を直します。