棚卸しとは?やり方・種類・時期から効率化までの完全ガイド

コラム 公開日: 2024-08-25 / 更新日: 2026-07-21 執筆・編集: nanco 編集部
「棚卸し」の文字が棚の形になり、各段に在庫が並んでいるカバー画像

帳簿の数と、数えた数が合わない。この差を見つけて正すのが棚卸しです。定義とやり方から、現場で起きる失敗、業種ごとの違い、決算との関係まで順に解説します。

月末の閉店後。売り場と倉庫をひととおり数えて事務所に戻ると、帳簿の在庫は128個。いま数えてきた現物は124個。
「4個、どこにいった?」

この、帳簿と現物のズレを見つけて、正しい数に直す作業が棚卸しです。

このページは、棚卸しの全体像をひとつにまとめた総合ガイドです。定義とやり方はもちろん、現場で実際に起きる失敗、業種ごとの違い、決算との関係まで、順番に読めば流れがつかめるように並べました。気になる章から読んでいただいても大丈夫です。

先に、要点だけ。棚卸しとは、帳簿の在庫数と実際の数のズレを見つけて正す作業です。手順は「準備 → 数える → 突き合わせ → 原因調査 → 確定」の5つ。時間を食うのは数えることより、数えたあとの転記と突き合わせなので、そこを軽くするほど棚卸しは楽になります。ひとつだけ動かせないのが、決算期末の棚卸し。期末の在庫金額がそのまま利益の計算に使われるので、省略はできません。

1. 棚卸しとは?定義と目的

棚卸しとは、帳簿上の在庫数と実際の在庫数を突き合わせ、差異を見つけて正す作業です。倉庫や売り場にあるものをひとつずつ数え、記録と照合します。

帳簿が正しければ、そもそも数え直す必要はないはずですよね。
ところが実際の現場では、帳簿と現物は少しずつズレていきます。

  • レジや記録を通らずに出ていくもの(サンプル、試食、破損で捨てた分)
  • 入力のし忘れ、数字の打ち間違い
  • 盗難や紛失

こうした「記録されない出入り」が毎日すこしずつ積み重なって、月末にはまとまった差になります。

ズレた帳簿を放っておくと、どうなるか。
「在庫はあるはず」と発注を見送って欠品する。逆に、あるのに二重で発注してしまう。
在庫の数字が信用できなくなると、そのあとの判断がぜんぶ狂います。

だから、定期的に現物を数えて、帳簿を現実に合わせる。これが棚卸しの役割です。

棚卸しで得られるもの

  • 在庫の過不足がわかる — 欠品や余りに気づけます
  • 損失に気づける — 盗難・破損・記録漏れを見つけて、対策できます
  • 利益計算の土台になる — 期末の在庫金額は、売上原価の計算にそのまま使われます(くわしくは後半の「税務と棚卸し」で説明します)
  • 在庫データが信用できるようになる — 発注の判断や在庫日数の計算など、データを活用する前提が整います

💡「棚卸し」は「たなおろし」と読みます。棚の商品を下ろして数えたことが語源とされ、「棚卸」と表記されることもあります。なお、仕事の内容を洗い出す意味の「業務の棚卸し」は、この作業にたとえた別の使い方です。この記事では在庫の棚卸しを扱います。言葉の意味・語源・ビジネス用語としての使い方は棚卸しの意味にまとめています。


2. 棚卸しの種類 — 実地棚卸しと帳簿棚卸し

棚卸しは、大きく2つに分かれます。

種類やること特徴
実地棚卸し現物をひとつずつ数える現物が基準なので確実。そのぶん人手と時間がかかる
帳簿棚卸し入庫・出庫の記録から理論上の在庫数を計算する手間は小さい。ただし記録に漏れがあると、そのままズレる

大事なのは、この2つはどちらかを選ぶものではなく、組み合わせて使うものだということです。
ふだんは記録(帳簿)で在庫を把握し、定期的に実地棚卸しで現物と突き合わせて記録を正す。これが基本の型です。

実地棚卸しの2つの進め方

実地棚卸しには、進め方が2通りあります。

  • 一斉棚卸し — 決算期末などに、対象をいっせいに数えます。全体を一度に確定できる反面、人手が要り、営業を止めることもあります。
  • 循環棚卸し(サイクルカウント) — 場所やカテゴリごとに範囲を区切り、少しずつ順番に数えます。日々の業務と並行でき、1回あたりの負担が軽いのが持ち味です。品目が多く、営業を止めにくいコンビニなどでは、カテゴリごとに日を分けて少しずつ数えていく、この進め方がよく使われます。

3. 棚卸しの基本手順(5ステップ)

棚卸しは、数えて終わりではありません。数える → 差を見つける → 原因を正す。ここまでで1セットです。前半の「数える」が2ステップ、後半の「差を正す」が3ステップ。手間がかかるのは前半ですが、棚卸しの値打ちは後半にあります。

① 計画と準備 — 日時・範囲・担当を決め、棚卸表を用意します。散らかった売り場は数え間違いのもと。片付けも準備のうちです。

② 数える — 2人1組が定番です。ひとりが数え、ひとりが記録します。エリアを区切って「済み」の目印を付ければ、数え漏れも二重カウントも防げます。

ここまでで「現物の数」が出そろいます。棚卸しの本題は、ここからです。

③ 突き合わせ — 数えた結果と帳簿を並べ、差のあるものを洗い出します。まだ直しません。まずは差の全体が見えるようにします。

④ 原因を調べる — いちばん飛ばされがちで、いちばん値打ちのある工程です。入力漏れか、破損の記録忘れか、置き場所違いか、数え間違いか。数字だけ合わせても、ズレを生んだ仕組みが残れば、翌月また同じ差が出ます。全部は追えなくても、差の大きい上位10件だけは原因までたどってみてください。

⑤ 確定と記録 — 帳簿を実際の数に直し、棚卸表を残します。差の原因と対策をひとこと添えておくと、次回がぐっと楽になります。

計画から当日の時間割、終了後の振り返りまで、実際の段取りは棚卸しのやり方(時間軸の手順ガイド)で、順を追って説明しています。


4. 棚卸しの時期と頻度

棚卸しの頻度は、決算期末の年1回が最低ライン、月1回が多くの現場の標準です。そのうえで、代表的なパターンは3つあります。

タイミング位置づけ
決算期末(年1回)最低ライン。期末の在庫金額を確定するために必要です
月次(月1回)多くの現場の標準。月末に締めて帳簿を正します
週次・循環差異が小さいうちに見つかる。原因の特定もしやすい

頻度を上げるほど、1回あたりの差異は小さくなり、原因調査は楽になります。
月1回の棚卸しで40個ズレていたら、原因はもう追いきれません。でも週1回で数個のズレなら、「あ、あのとき出したサンプルの分だ」と思い当たれます。

ただし、頻度を上げるうえで最大の壁が「1回の棚卸しが重い」ことです。数えるのに半日かかる作業を、毎週はできません。
ここを解くのが、あとで説明する効率化です。


5. 棚卸しに必要なもの(前日までのチェックリスト)

はじめての方向けに、そのまま使えるチェックリストにしておきます。前日までに全部そろっていれば、当日は数えることだけに集中できます。

  • 棚卸表(アイテムの一覧に、帳簿の在庫数と記入欄を付けたもの)
  • 担当割り。2人1組 × エリアの数が目安です
  • 数える単位の取り決め。ケースで数えるか、バラで数えるか
  • 作業中に入出庫が起きたときの扱い。いったん止めるか、別に記録して後で反映するか
  • 紙とペン、またはスマホ。「済み」マーク用の付箋も忘れずに

💡 単位の取り決めは、はじめる前に必ず。「1ケース=24本入り」を「1」と数える人と「24」と数える人が混ざると、それだけで大きな差異が生まれます。


6. 棚卸しでよくある失敗と対策

数え間違いは、実は棚卸しの失敗の入り口にすぎません。ほんとうに厄介なのは、せっかく数えたのに、その数が正しい帳簿として残らない失敗のほうです。よくある5つを、「数えるまで」と「数えたあと」に分けて見ていきます。

数えるまでの失敗

  • 数え間違い・二重カウント — エリアを区切って担当を分け、数え終えた棚に「済み」の目印を付けます。2人1組で数える人と記録する人を分けると、さらに減ります。
  • 時間がかかりすぎて、後半で精度が落ちる — 製造業では、月末に3〜4人がかりで半日から1日かけて数える現場も珍しくありません。集中力が切れる午後ほど、数え間違いは増えます。一度に全部を数えず、循環棚卸しで小分けにするのが、いちばんの精度対策です。

数えたあとの失敗 — ここが棚卸しの本題です

  • 転記ミス — 紙に書いた数字をExcelに打ち込むとき、写し間違いが起きます。数えた数は合っていたのに、帳簿に入る数字が違う。数えた場でそのまま入力できる仕組みにすれば、転記そのものがなくなります。
  • 原因を調べずに数字だけ合わせる — 手順のステップ④そのものです。数字だけ合わせても、ズレを生んだ仕組みが残れば、翌月また同じ差が出ます。
  • 「記録されない出庫」を放置する — サンプルで持ち出した分、試食で開けた分、割れて捨てた分。レジや入出庫を通らない出庫は、毎月の「原因不明のズレ」の正体です。捨てた・持ち出したを、その場で記録する。あとでまとめて、は忘れます。

なお、すでに出てしまった差異の直し方は、棚卸しをしないとどうなる?差異の原因と直し方で「特定の商品だけ毎回マイナス」などの症状別に説明しています。


7. 棚卸しを効率化する方法 — 紙・Excel・アプリ

棚卸しのやり方は、道具でいうと3段階あります。

段階進め方残る手間
紙の棚卸表印刷したリストに手書きで記入集計とExcelへの打ち込み。写し間違いも起きる
Excel集計は自動化できる「数える→書く→打ち込む」の流れは同じ。現場とパソコンの往復が残る
在庫管理アプリスマホで数えて、その場で入力転記がなくなり、差異も自動で計算される

ここで一度、立ち止まって考えてみてください。
棚卸しの時間のうち、純粋に「数えている」時間はどのくらいでしょうか。

実は多くの現場で、時間を食っているのは数えることではありません。数えたあとの転記・突き合わせ・帳簿の修正です。
書き写して、Excelに打ち込んで、帳簿と見比べて、直す。この「数えていない時間」を削ることが、効率化の本丸です。

もうひとつの鍵がバーコードです。読み取れば「どのアイテムか」の特定が一瞬で終わり、探す・見間違えるがなくなります。既製品のJANコードのほか、型番や管理番号から自分でバーコードを作ってラベルを貼る方法もあります。

たとえば、スプレッドシートを見ながら2人1組で60分かけていた棚卸しを、バーコードとアプリで数える形に変えて、12分まで縮めた現場があります(作業時間およそ80%減)。速く数えたのではなく、転記そのものをなくしたことが効いた例です。くわしくはクリエイトワンの導入事例にまとめています。


8. nanco で棚卸しをする方法

ここでは、私たちが開発しているクラウド在庫管理アプリ「nanco」で棚卸しをする場合の流れを紹介します。前の章の「転記・突き合わせ・修正をなくす」を、そのまま形にした機能です。

  1. スマホでバーコードを読み取る — バーコードがないアイテムは、名前や属性で検索して呼び出せます
  2. 数えた数(棚卸し数)を入力する — 現在の在庫数との差が、その場で表示されます
  3. 棚卸しを確定する — 入力した棚卸し数が、そのまま在庫数に反映されます。帳簿を別に直す二度手間はありません
  4. 記録が残る — いつ・何を数えたかが棚卸しごとに残り、棚卸し数・在庫数・属性はCSV・Excelで書き出せます

エリアごとに少しずつ進められるので、循環棚卸しにも向いています。ハンディターミナルのような専用機器は要らず、ふだんのスマホで始められます。
くわしくは棚卸し機能の紹介ページにまとめています。


9. 業種別の棚卸しの違い

同じ「棚卸し」でも、業種によって苦労のポイントは違います。

製造業 — 材料・仕掛品・端材まで

完成品だけでなく、材料、作りかけの仕掛品、切り残しの端材まで数える対象になります。とくに端材は「どこに何があるかは工場長の頭の中」になりがちで、棚卸しのたびに苦労するポイントです。エンドミルやドリルなど工具・消耗品も対象に含めると、発注漏れが減ります。
一斉棚卸しの負担がとくに大きい業種で、小分けの循環棚卸しと相性がよい分野です。

→ 導入事例: パーティグッズメーカー・アイコの在庫管理

小売・EC — 「レジを通らない出庫」との戦い

売り場と倉庫に加えて、ECの注文分も動きます。差異の主な原因は、試食・サンプル・破損廃棄といったレジを通らない出庫。月末の「原因不明のズレ」の正体は、たいていこれです。
在庫切れに気づかず注文を受けてしまう「売り越し」を防ぐ意味でも、小さな棚卸しを高頻度で回すやり方が向いています。

飲食 — 仕込みとロスで形が変わる

食材は仕込みで形が変わり、廃棄(ロス)も日常的に出ます。原価率を正しくつかむには月次の棚卸しがほぼ必須です。数える対象を「金額の大きい主要食材」に絞って軽くする工夫も有効です。

→ 導入事例: クラフトビール醸造所 THIS BREWING の在庫管理


10. 税務と棚卸し — 決算との関係

最後に、経理・決算まわりの話です。
なぜ会社は決算前に必ず棚卸しをするのか。期末の在庫金額が、利益の計算にそのまま使われるからです。

決算では、期末に残っている商品や材料などの在庫を棚卸資産と呼びます。売上原価は、次の式で計算されます。

売上原価 = 期首の在庫 + 当期の仕入れ − 期末の在庫

期末の在庫を数え間違えると売上原価が変わり、利益が変わります。利益が変われば税額も変わる。だから決算期の棚卸しは、「やってもやらなくてもいい作業」ではなく、決算の土台なのです。

押さえておきたいポイントは3つです。

  • 法人は事業年度末、個人事業主は12月31日時点の在庫を確定します
  • 棚卸しの結果をまとめた棚卸表は保存が必要です。法人の帳簿書類は原則7年の保存が求められます
  • 在庫にいくらの金額を付けるか(評価方法)には最終仕入原価法などいくつかの方式があり、採用には届出が関わります

💡 この章は概要だけにとどめています。評価方法の選択や税務上の細かい扱いは事業の状況によって変わるので、税理士や会計士に確認するのが確実です。


11. おわりに

最初の「4個、どこにいった?」を、覚えているでしょうか。

ああいうズレは、たいてい誰かのミスというより、記録に残らない出入りが積もった結果です。持ち出したサンプル、割れて捨てた1個、単位の数え違い。犯人は地味で、そしてたくさんいます。

だから、数を合わせて終わりにしないでください。差の大きいものから3つか4つでいい、「これはあのときのアレだ」と思い当たるところまで追う。それだけで、次の月は同じズレが出ません。棚卸しがしんどいのは、これをやらずに毎月ゼロから数え直しているから、という面もあります。

もうひとつ。もし棚卸しの大半が「数えたあとの書き写し」で潰れているなら、そこは削れます。紙からExcel、Excelから帳簿へ——この往復さえなくせば、週に一度の棚卸しだって、そんなに重くありません。

在庫の数字が合っている。地味ですが、発注も、販売も、決算も、その上に立っています。

合わせた数字の使い道は、在庫日数の計算方法在庫回転率とはへ続きます。

よくある質問

棚卸しと在庫管理の違いは何ですか?
在庫管理は、発注・保管・記録など在庫にかかわる仕事の全体を指します。棚卸しはその中のひとつで、実際の在庫数を数えて帳簿とのズレを正す作業です。棚卸しで帳簿が現実に合っていることを確かめて、はじめて日々の在庫管理の数字が信用できるものになります。
棚卸しはどのくらいの頻度で行うべきですか?
決算期末の年1回が最低ラインで、月1回が多くの現場の標準です。頻度を上げるほど1回あたりの差異は小さくなり、原因も特定しやすくなります。1回の作業を軽くできるなら、週次や、場所ごとに少しずつ数える循環棚卸し(サイクルカウント)も選択肢になります。
棚卸しをしないとどうなりますか?
帳簿と現物のズレが直されないまま積み重なり、在庫の数字が信用できなくなります。その結果、あるはずの在庫がなくて欠品したり、あるのに二重で発注したりが起きやすくなります。また期末の在庫金額は利益の計算に使われるため、決算期末の棚卸しは税務のうえでも欠かせません。くわしくは「棚卸しをしないとどうなる?」の記事で症状別の直し方まで説明しています。
棚卸しで差異が出たときはどうすればいいですか?
まず差異の大きいものから原因を調べます。入力漏れ、破損や廃棄の記録忘れ、置き場所の違い、数え間違いあたりが定番です。原因がわかったら帳簿を実際の数に直し、同じ差異が出ないように記録のルールを見直します。数字だけ合わせて原因を調べないと、翌月また同じズレが出ます。
営業を止めずに棚卸しはできますか?
できます。場所やカテゴリごとに範囲を区切り、少しずつ順番に数える循環棚卸しなら、日々の業務と並行して進められます。数えている範囲の入出庫をどう扱うか(いったん止める・別に記録して後で反映する)だけ、事前に決めておくのがコツです。
棚卸しはスマホだけでもできますか?
できます。たとえばクラウド在庫管理アプリ「nanco」の棚卸し機能では、スマホでバーコードを読み取って数えた数を入力すると在庫数との差がその場で表示され、確定すると在庫数に反映されます。ハンディターミナルなどの専用機器は不要です。
決算の棚卸しでは何を残しておけばいいですか?
棚卸しの結果をまとめた棚卸表を保存します。期末の在庫金額は売上原価と利益の計算に使われるため、いつ・何を・いくつ数えたかが後から確認できる状態にしておきます。法人の帳簿書類は原則7年の保存が必要です。評価方法など税務上の細かい扱いは、税理士に確認するのが確実です。