目次
1. そもそも在庫日数とは?
突然ですが、ここに在庫数30個のリンゴがあります。
今後1週間売るために、この在庫量は多いですか?少ないですか?
この「多い・少ない」を判断するためには、在庫日数を計算してみることが重要です。

はい。そうですね。
これだけの情報ではわからないです。
在庫数そのものの数が把握できても、その商品がどのくらい売れているものなのか?が分からないと予想がつきません。
では情報を追加します。
このリンゴ、この1年間、毎日必ず3個売れています。
この在庫数だと、あと何日持ちこたえられそうでしょうか?
答えは10日、ですね。
1年間変わらず毎日3個ずつ売れているのだから、予想として、これはきっとこのまま毎日3個売れる、と。
すると、
在庫30個 ÷ 毎日3個 = 10日間
このように、一定期間の減り方で在庫が何日もつのか、を表した日数が計算できます。
この日数を「在庫日数」と呼びます。
在庫日数を計算することで、今の在庫量が多すぎるのか、少なすぎるのか、適正なのかを客観的に判断できます。
💡「在庫日数」という言葉は在庫管理の専門用語として、場合によって様々な定義をされることがありますが、端的には在庫が「何日分あるか」を表現した数字です。
2. 在庫日数を求めるメリット
在庫が多いか少ないか、客観的に判断する材料になる
在庫数自体を知っても、それが多いのか少ないのかは、判断できません。
在庫日数を求めれば、感覚ではなく、「あと◯日分ある」という数字で在庫をとらえられるようになります。
この数字をもとに、今の在庫量が適正かどうかを判断できるようになります。
「これは売れ筋だから10日で無くなる」
「これは全然売れてないから3ヶ月は余裕で残る」
——そういった判断ができるだけで、発注の精度は大きく変わります。
欠品リスクを防げる
在庫が切れる前に、気づけます。
「在庫はまだ20個あるけど、毎日5個売れてるなら、4日後にはもう無くなるな」と予測できれば、慌てて仕入れる必要もなくなります。
「気づいたら無かった!」を防ぐための、早めのアラートにもなるのです。
仕入れ・補充のタイミングが見える
次に仕入れるべき時期を、逆算できるようになります。
「リードタイムが7日あるなら、在庫が7日分を切る前に発注すればいい」
——そんなふうに、補充のルールづくりにも役立ちます。
無駄な在庫を減らせる
「全然売れてないのに、在庫が90日分もある」と気づければ、その商品は仕入れを止めたり、値下げを検討したりできます。 在庫を“置いておくだけ”の状態から、資金を効率よく使う方向へ変えていくためのヒントになります。
売れ筋・死に筋が見えてくる
毎日売れていて在庫日数が短い商品は「売れ筋」、ずっと売れていなくて在庫日数が長い商品は「死に筋」。
在庫日数は、そんな区別の目安にもなってくれます。
3. 在庫日数の簡単な求め方
では、今度は、ここに在庫数30個の青りんごがあります。
その青りんごは、
日付 | 売上個数 |
---|---|
1日目 | 9個 |
2日目 | 5個 |
3日目 | 7個 |
4日目 | 7個 |
5日目 | 6個 |
6日目 | 3個 |
7日目 | 5個 |
のような売れ方をしています。
この商品の場合は、あと何日もつでしょうか?
1番売れている9個の日を基準にすればよいか、それとも一番少ない3個を基準にすればよいか…
バランスを考えるなら、平均で一日何個売れているか、計算しようとするのではないでしょうか?
💡 どの数字を基準にするのが正解、というのはありません。 未来のことは誰にもわかりませんので、可能性として、これが一番うまくいきそうだな、という方法を選んでいくしかありません。
この7日間の総売り上げ個数は42個です。
平均の売上個数は42個÷7日=6個です。
現在30個在庫があるので、一日平均6個売れると仮定すると、30÷6=5、5日は持ちこたえられそうかな、と計算できますね。
このように、
①ある一定の期間を決めて、その期間内での一日の平均売上個数を計算
②現在の在庫数を①の数で割って、在庫日数を算出する
これは、在庫データを意味ある形に変換する「在庫分析」の第一歩です。
4. Excelで在庫日数を計算する方法
上に紹介した方法を、手で計算するのは大変です。 在庫管理のデータ(在庫数の履歴データ)があれば、Excelを使って計算することが出来ます。
手順① 在庫数の履歴データを用意する
クラウド在庫管理アプリ「nanco」では、商品ごとの入出庫が記録されるだけでなく、いつ・何個・誰が・なぜという情報まで履歴として自動的に蓄積されています。
このデータをダウンロードする方法は、別のコラムに詳しく書いてありますので、
こちらを参照してください。
今回は、7か月分の在庫数の履歴が記録されたサンプルデータを用意しましたので、それを使って説明していきます。
ダウンロードしてお使いください。
- サンプルデータ Z010_竹炭入り消臭サシェ_0715まで.csv
在庫数の履歴データには、下の画像のように日時・在庫数・増減・変更理由の情報が一覧で入っています。

手順② 基準とする期間を決める
平均を計算する期間をどこにするかによって、在庫日数の結果は当然変わってきてしまいます。ですので、期間の設定は一つの重要なポイントとなります。
季節性のある商品、例えば7月8月の暑いシーズンに多く売れる商品の場合、1年間全体の売り上げ平均を求めても、あまり意味はありません。 現在が7月ならば、去年の7月のデータから平均の売上個数を求めた方が、意味のある結果が求められそうです。 去年のデータが無い場合や、あまり季節に関係なく、規則性も無い場合は、直近1か月間や直近2週間といった、現在に近いデータの方が有用かもしれません。
いずれにしても、どの期間を基準すべきかは状況によって変わってくるため、理由を持って設定するべきでしょう。
今回のサンプルデータをグラフ表示すると、5月に入ってから売上スピードが上昇していることが分かります。この傾向が続くと予想して、5月1日~7月1日の2か月の売り上げを基準にすることにします。

Excelのセルで言うと、51行から107行の範囲のデータを使用します。


③期間の総売り上げ個数を計算する
今回のデータでは、売上個数は、C「増減」の列にマイナスの数として表現されています。

売り上げたすべての数を計算するために、空いているセルに、
と入力します。
これは、マイナスの数(ここでは売上)のみをピックアップして足し合わせてくれる関数です。

すると、結果は-104と出ました。2か月で104個売れてることがわかります。

④一日の平均売上個数を計算する
売上の総数が計算できましたので、あとは日数で割れば平均がでます。
指定期間の日数を割り出します。
自分で数えても全く問題ありませんが、ExcelだとDATEDIFという関数が便利です。
空いているセルに、
もしくは、

と入力します。要するに、一つ目の要素に開始日、二つ目の要素に終了日、三つ目の要素にオプションの”d”を入れるだけです。
すると、「61」と表示されるはずです。 終了日の方は日数には含まれません。
あとは、③で計算した総売り上げを日数で割るだけです。
結果は、およそ-1.7となりました。
一日の平均売上個数は、約1.7個です。
⑤在庫日数を計算する
基準となる平均売上個数が計算できたので、データに含まれる最新の在庫数、2024/7/15の23個の在庫日数を計算してみます。

となり、およそ13.5日分ということが分かりました。
5. まとめ
在庫は、ただ在庫数の数そのものを見るだけでは、多い少ないの判断や解釈ができません。
それができるのは、経験で大体の売れ行きが分かっている人だけ。
もしあなたの現場の在庫管理がそういった経験や勘に頼っているとしたら…それは属人化している証拠。
「今ある在庫で、あと何日持ちそうか?」
「仕入れはいつすればいいか?」
在庫日数を計算することで、今の在庫量が適正かどうかを数字で判断できるようになります。
こういった問いに対して、数字で答えてくれるのが在庫日数という指標でした。
在庫日数を求めることは、売れ方をふまえて在庫を見る、ということ。
つまり、「勘」「感覚」に頼らず「根拠」を持った在庫判断への第一歩です。
在庫日数の計算結果をもとに、欠品や過剰在庫のリスクを減らし、より効率的な在庫管理が可能になります。
Excelでの計算も、今回紹介したように意外とシンプルです。
在庫データさえあれば、今日からすぐにでも試せます。
まずは一つの商品からでも、在庫日数を出してみてください。
きっと、「あれ、この商品、思ったよりも危ないかも?」
あるいは、「意外と余裕あるな」という気づきがあるはずです。
その気づきが、在庫量の適正化や在庫管理の改善につながります。