目次
1. 導入
前回の記事(在庫日数の計算方法とは?Excelでできる適正在庫の見極め方)では、Excelを使って在庫日数を計算する方法や、そのメリットについて詳しく解説しました。
今回はさらに一歩進めて、AI(ChatGPT)を活用し、より手軽かつスピーディーに在庫日数を求める方法をご紹介します。
従来の手作業やExcelでの計算と比べて、AIを使うことでどれほど効率的に在庫分析ができるのか、その具体的な手順とポイントを解説していきます。
2. そもそも在庫日数とは?
過去記事で解説した在庫日数の計算方法とは?Excelでできる適正在庫の見極め方の内容のおさらいになりますが、 在庫日数とは…
現在庫数 ÷ 基準の売上個数 = 在庫日数
で計算できる、「一定期間の減り方で在庫が何日もつのか」を表した数値です。
例えば、直近1か月である商品が一日平均10個売れており、現在30個在庫がある、とした場合、
30個 ÷ 10個 = 3日
となります。
このように、一定期間の減り方で在庫が何日もつのか、を表した日数を「在庫日数」と呼びます。 在庫日数を計算することで、今の在庫量が多すぎるのか、少なすぎるのか、適正なのかを客観的に判断できます。
ポイントとして、例では直近1か月という期間での1日平均売上個数を基準の数に用いましたが、この基準の数は状況によって適切に設定する必要がある、ということです。
3. ChatGPTで在庫日数を計算する
今回は、在庫履歴データを用意して、ChatGPTにデータを読み込ませ在庫日数を計算してもらいます。
3-1. データの準備
在庫履歴のデータは、nancoからダウンロードすることができますが、こちらの記事ではサンプルデータを用いて解説していきます。
ご自身の在庫履歴データをダウンロードして使用する場合は、こちらの記事の「その1: 在庫履歴データのダウンロード」をご参照ください。
サンプルデータは雑貨商品(竹炭入り消臭サシェ)の2024年1月~7月中旬までの在庫数の変化を記録したCSVデータです。
在庫数の履歴データには、下の画像のように日時・在庫数・増減・変更理由の情報が一覧で入っています。

今回のサンプルデータをグラフ表示すると、5月に入ってから売上スピードが上昇していることが分かります。Excelで分析したときと同様に、この傾向が続くと予想して、5月1日~7月1日の2か月の売り上げを基準にすることにします。

3-2. ChatGPTに指示をする
ChatGPTで分析する方法を紹介していきます。
ChatGPTには、能力の違う様々なモデルが用意されています。

現時点で、ChatGPT 4oというモデルが在庫日数の計算に適しています。 ChatGPT 4oは、回数制限がありますが、無料ユーザーでも使用することができます。
- 利用回数の目安: 無料プランではたとえば「10回/5時間」や「10ターン/3時間」といった制限があると報告されています。
- 制限を超えると、GPT‑4oミニ(軽量モデル)や別モデルに自動的に切り替わります。
サンプルデータをChatGPTの画面にドラッグ&ドロップしたうえで、下記のプロンプトを送信します。
2024年5月1日~6月30日の売り上げを基準に1日の平均の売上個数を算出し、最新の在庫数が在庫日数で何日に相当するか、計算してください。

すると、ChatGPTから下記のような回答が得られました。
以下の通り計算されました:
・売上期間:2024年5月1日~6月30日(61日間)
・販売戸数合計:104個
・1日の平均販売数:約1.70個
・最新の在庫数:23個
・在庫日数:約13.49日分
つまり、現在の在庫は約13日半分の販売に相当します。
たった5秒で計算してくれました。
あっけなく完了してしまいましたが、前回Excelで計算した答えと一致しています。
Excelで計算する手間と、ChatGPTで計算してくれる時間を比べたら、圧倒的にChatGPTのほうが早いです。
あっという間に回答してくれるスピード感を活かし、別の基準を与えて結果がどう変わるかを試してきます。
4. 別の期間で在庫日数を計算して比較してみる
今度は、次のようなプロンプトで、全期間のデータを基準にしてみます。
それでは、これまでの全部の売り上げデータを元にして、1日の平均の売り上げ個数を算出し、最新の在庫数が在庫日数で何日に相当するか、計算してください。
すると、ChatGPTから下記のような回答が得られました。
全期間(2024年1月2日~2024年7月15日)のデータに基づく計算結果は以下の通りです:
・販売戸数合計:167個
・1日の平均販売数:約0.85個
・最新の在庫数:23個
・在庫日数:約27.0日分
つまり、これまでの販売ペースを基準にすると、現在の在庫は27日に相当します。
全期間(1月1日~7月15日)の売上を基準にすると、在庫日数は約27日分、先ほどの二倍まで延びてしまいました。 やはり売れ行きに波のある商品は、特に現状どのような売れ行きなのか、よくよく判断したうえで基準の期間を決めるべきでしょう。
5. 基準の期間をChatGPTに提案してもらう
では、この基準の期間すらも、AIに提案してもらうのはどうでしょうか?
現在の在庫の在庫日数を計算するのに、ふさわしいと思う基準の期間を提案してください。そして、それがなぜ相応しいのか、根拠を解説してください。
現在の在庫に対する在庫日数を計算するうえで、**「直近2か月(例:2024年5月1日~6月30日)」**を基準とするのが最もふさわしいと考えられます。
その理由と根拠は以下の通りです。
✅ 推奨期間:直近2か月
理由①:最新の販売動向を反映できる
- 在庫日数の目的は「今の在庫が、今の売れ方であと何日もつか」を知ることです。
- 販売ペースは季節やキャンペーンによって変動します。
- たとえば、1月〜4月の売上が低調で、5月以降に急に売れ始めた場合、全期間の平均にすると古い低速のデータに引きずられて、実態より在庫が長持ちするように見えてしまいます。
理由②:季節変動を緩やかに吸収できる
- 1か月では短すぎて偶発的な変動(雨の日が多かった/たまたま来客が少なかった など)の影響を受けやすい。
- 一方で3か月以上にすると、トレンドの変化を捉えにくくなります。
- その中間の「2か月」は、短期のノイズを吸収しつつ、直近の販売傾向を反映できる適度な期間です。
理由③:実務上の管理サイクルと合う
- 多くの小売業では、仕入れ・棚卸しのサイクルが1か月~2か月単位です。
- 2か月分のデータを使えば、仕入れ・補充判断と整合性のある分析が可能になります。
補足:ケースによるカスタマイズも有効
商品の特徴 | 推奨する期間例 |
---|---|
通年安定的に売れる定番商品 | 全期間の平均も参考にして良い |
トレンド・季節変動が強い商品 | 直近1〜2か月がより適している |
新商品で販売履歴が短い | 初月データに基づく仮推定 or 類似品を参考に |
最初に設定した期間と同じ、直近2ヶ月が選ばれました。
「1か月では短すぎて偶発的な変動の影響を受けやすく、一方で3か月以上にするとトレンドの変化をとらえにくくなる」という根拠は「ここ2か月売れ行き傾向が変わっているから」という説明に加えて普遍的ですし、納得感も高まります。
6. まとめ
本記事では、AI(ChatGPT)を活用して在庫日数を素早く計算する方法をご紹介しました。従来のExcelによる手作業と比べて、AIを使うことで、より手軽に、さまざまな期間や条件で在庫分析を行うことができます。
また、基準とする期間を変えて計算結果を比較したり、AIに最適な期間を提案してもらうことで、現状に合った在庫管理の判断がしやすくなります。
在庫日数の分析は、適正在庫の維持や欠品・過剰在庫の防止に役立ちます。AIの力を活用し、より効率的で柔軟な在庫管理にぜひチャレンジしてみてください。